特許か実用新案か?
皆さんこんにちは、弁理士の小林です。
今日は「特許か実用新案か」というテーマでお話します。
「先生、これは特許じゃなくて実用新案くらいかなと思いますが、どうですか?」
「特許は無理そうだけど、実用新案ならとれるんじゃないかと思いますが、どうですか?」
こんなご相談を受けることがあります。この記事では、同じような疑問をお持ちの方々のために、特許と実用新案の違いについてお話します。特許や実用新案での権利化をご検討中の方は是非参考にしてください。
目次
1.特許と実用新案の保護対象
最初に特許と実用新案の保護対象について説明します。特許も実用新案も、技術的なアイディアを保護する点で共通します。しかし、特許の保護対象に物や方法が含まれるのに対し、実用新案の保護対象は物の構造に限られ、方法は含まれません。
特許の保護対象である「物」には、測定装置、情報処理システム、構造物の接合構造などのほか、プログラムなどが含まれます。また、特許の保護対象である「方法」は「単純方法」と「物を生産する方法」に大別され、前者には、半導体部品の洗浄方法やロボットの制御方法など、物の生産を伴わない方法が、後者には、電解水製造方法や 菓子製造方法など、何らかの物の生産を伴う方法が含まれます。
一方、実用新案の保護対象には「方法」は含まれないため、上述の「半導体部品の洗浄方法や半導体部品の洗浄方法やロボットの制御方法、電解水製造方法、菓子製造方法などについて保護を受けることはできません。
2.特許と実用新案の審査
次に両者の審査についてです。特許権を取得するためには、出願後に特許庁で行われる特許性についての審査をクリアしなければなりません。一方、実用新案の場合、登録要件についての審査は行われず、形式的な要件を満たしていればすべて登録されます。
登録要件についての審査をしないということは、同じ或いは似たような内容の権利が二重・三重に登録されている可能性があるということです。このため、実用新案権は特許権と比べると信用度は落ちると言えます。
3.権利行使の際の注意点
最後に、権利行使時の注意点についてです。特許の場合、他社が自社特許の類似品(被疑侵害品)を製造・販売していることを見つけたら、直ちに相手方に対して警告書を送ったり、提訴したりすることができます。ところが、審査なしで登録された実用新案権の場合はそうはいきません。
実用新案権を行使するためには、事前に特許庁の「技術評価」を受ける必要があります。技術評価というのは、特許で言う特許性の審査(実体審査と呼ばれます)のようなものです。特許庁に技術評価の請求をすると、自社保有の実用新案権について「技術評価書」が作成され、自社技術が6段階で評価されます。学生時代の通知表のようなイメージです。評価の数字が大きいほど権利として強く、数字が小さいほど権利としては弱いと言うことになります。実用新案権を行使する際には、この技術評価書を相手方に提示する必要があります。
技術評価書を提示して権利行使をした場合において、事後的に実用新案登録が無効にされたときは、実用新案権者は相手方に与えてしまった損害を賠償しなければなりません。このため、評価が低く将来的に無効とされるリスクが大きい場合、実質的に権利行使はできないことになります。
4.まとめ
以上のように、特許と実用新案には、保護対象や実体審査の有無、権利行使時の制約など、様々な違いがあります。従来は、「難しいものは特許、簡単なものは実用新案」という基準で判断していたケースも多いようですが、それだけで判断するのではなく、上記のことを理解した上で判断するようにしてください。社内で検討する際には、こられのことを参考にして頂くと良いと思います。「特許」と「実用新案」のどちらで権利化すべきか判断がつかなければ、お気軽にご相談ください。
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