審査請求はいつする?
皆さんこんにちは、弁理士の小林です。
今日は「審査請求はいつする?~審査請求のタイミング3選」というテーマでお話します。
特許を取得するためには、特許性についての審査を受ける必要があります。しかし、出願をしただけでは、特許性についての審査は開始されません。審査を受けるためには、出願とは別に「審査請求」という手続をしなければなりません。今日はこの審査請求のタイミングについてお話しします。特許出願をご検討の方、審査請求をいつすべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
目次
1.審査請求ができる期間
審査請求ができる期間は、原則として出願の日から3年以内です。この期間内に審査請求をしない場合、出願は取り下げられたものとして扱われます。審査請求はこの期間内であればいつでもすることができます。出願後すぐにする方もいれば、3年ギリギリのタイミングでする方もいます。
2.審査請求のタイミング3選
審査請求については、どのタイミングで手続きすべきかというご質問を頂くことがあります。実際のところ、審査請求をするタイミングに正解はなく、製品化のタイミングや出願目的、権利取得希望時期、経済的事情などを考慮して各出願人が判断することになります。
とはいえ、出願に慣れていない方にとっては、自身で審査請求のタイミングを決めるのは中々難しいものです。そこで、この記事では、私の考える審査請求のタイミング3選をあげてみます。最初にお伝えしたとおり、審査請求をすべきタイミングについての正解はありませんので、参考程度にお考えください。
2.1 出願直後
1つ目は出願直後です。既に製品発売日が決まっており、できるだけ早い段階で権利を取得したいような場合には、出願直後に審査請求をすることが考えられます。審査請求は審査開始の合図なので、権利化を急ぎたければ、審査請求を早くするしかありません。このような事情がある場合には、出願直後に審査請求をするのが良いでしょう。
ただし、出願直後に審査請求をすることにはデメリットもあります。それは、「特許出願中」と謳える期間が短くなる可能性があるということです。特許出願中の段階では、他社牽制効果を狙って「特許出願中」と謳うことがよく行われますが、出願直後に審査請求をし、早期に拒絶が確定してしまうと、それ以降は「特許出願中」と謳えなくなってしまうので注意が必要です。
2.2 出願から1年経過後
2つ目は、出願から1年が経過したタイミングです。この「1年」というのは、いわゆる「優先権」が認められる期間で、特許の世界では非常に重要な期間です。
出願後、製品を改良した場合などに、改良事項を出願内容に盛り込みたいという場合があります。しかし、出願後に新規の事項を追加することは認められていないため、改良事項を盛り込むためには、改めて出願をしなおさなければなりません。
出願をしなおす場合、最初の出願日から1年以内であれば「優先権※1」を主張することができます。優先権を主張した場合、2つの出願は出し直した出願に一本化され、元の出願は取り下げられたものとして扱われます。このため、元の出願について既に審査請求をしていると、その審査請求費用が無駄になってしまいます。一定条件を満たせば、納付済みの審査請求費用の一部が返還されますが、それでも全てが戻ってくることはありません。
最初の出願日から1年が経過し、優先権を主張した出願をする可能性がなくなれば、このような費用の無駄を回避することができるため、出願から1年経過後も審査請求に適した一つのタイミングと言えます。
(※1 優先権については別の回で詳しくお話します)
2.3 出願後3年ギリギリのタイミング
3つ目は、出願後3年のギリギリのタイミングです。このタイミングは審査請求をする最後のチャンスです。このタイミングで審査請求をしなければ、出願が取り下げられたものとみなされてしまいます。「特許出願中」と謳える期間、言い換えれば、他社を牽制できる期間を長く確保したい場合には、審査請求を期限ギリギリまで行わないということが考えられます。
3.まとめ
いかがでしたか?「審査請求」をするタイミングについてイメージをつかんで頂けましたか?審査請求をすべきタイミングについて正解はなく、「特許出願中」と謳いたい期間や権利取得希望時期、経済的事情などを考慮して、最終的には出願人側でご判断頂くことになります。審査請求は特許権を取得するために不可欠な手続です。審査請求のタイミングで悩んでいる方は参考にしてみてください。
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