menu

先行技術調査はなぜ重要か?

公開日:2022年11月17日

 

 

皆さんこんにちは、弁理士の小林です。

今日は「先行技術調査はなぜ重要か?」というテーマでお話します。

 

特許出願のご依頼を受ける際、先行技術調査をしたか否かをお伺いします。出願書類に先行技術文献を記載する必要があるからということもありますが、実はそれ以上に重要な意味があります。この記事では、先行技術調査がなぜ重要なのかについてご説明します。知財担当の方はもちろん、開発に携わる方も是非参考にしてください。

 

1.先行技術調査とは

 

先行技術調査とは、自身が開発・出願しようとする発明について、先行する特許や実用新案の有無を調べることを言います。先行技術調査は特許データベースを利用して行います。特許データベースには様々なものがありますが、初心者の方は、INPITが無料で提供しているJ-Plat Patを使ってみるといいと思います。使い方のマニュアルもあり、初めてでも使いやすいと思います。当事務所のHPにも、J-Plat Patの検索窓を設置したので、是非使ってみてください。

 

J-Plat Pat検索窓設置のご案内

 

先行技術調査は自社内でできると良いのですが、自社で調査をするのが難しい場合は、調査会社や特許事務所などに外注するのも一案です。ただし、外注する場合には時間も費用もかかりますので、最低限の調査は自社内でできるようにしておくことをお勧めします。

 

【参考】特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

 

2.先行技術調査はなぜ重要か?

 

先行技術調査はなぜ重要なのでしょうか?端的に言えば、「無駄な開発をしないため」です。お金と時間をかけて一生懸命開発をしても、その開発した製品が既にA社が特許権を保有しているものと同じものであれば、開発した製品の製造や販売をすることはできません。A社の特許権を侵害してしまうからです。こうなると、開発が無駄になってしまいます。

 

開発製品について、誰も特許権を保有していないけど、既に文献に開示されていた場合はどうでしょう?開発した製品の製造や販売をしても特許権の侵害になることはありません。しかし、これは他の会社にとっても同じです。つまり、自社のみならず、他社も同様の製品の製造・販売をすることができるということです。こうなると、自社の製品を売るために価格を下げざるを得なくなります。自社が価格を下げれば相手方も価格を下げてきます。結果、価格競争に巻き込まれて利益率が低下し、期待する利益を得られなくなるでしょう。場合によっては、開発に投資した分を回収できない可能性すらあるのです。

 

どんなに性能のよい製品を開発しても、利益を生み出さないのでは開発は成功とは言えません。先行技術調査はこのようなリスクを最小限に抑えるためのものです。こう考えれば、先行技術調査の重要性をご理解頂けるのではないでしょうか。

 

3.先行技術調査はいつ行う?

 

では、先行技術調査はいつ行うのが良いのでしょうか?正解はありませんが、個人的には、開発の前、開発中、製品化前等、開発が次の段階に入る前等複数回にわたって行うのが良いと考えています。製品が完成した段階で他社権利が見つかっても遅すぎるため、少なくとも、開発初期段階に1回は調査をしておくのをお勧めします。

 

調査を複数回行うのが良いと考える理由としては、開発の方針が変わる可能性があることや設計変更があること、公開される案件が時間の経過とともに増えていくことなどが挙げられます。各段階に移る前に調査を行うことで、類似の先行技術が見つかった場合に、後戻りしやすくなります。このため、先行技術調査は各段階に移行するタイミングで複数回実施するのが良いと思います。

 

4.調査の限界

 

最後に、調査の限界についてご説明します。特許の場合、審査状況の如何に関わらず、出願後1年6カ月経過後に出願が公開されます。このほか、特許登録されたタイミングで、特許された内容が公開されます。調査ができるのは、公開された文献だけです。つまり、出願間もない未公開の案件については調べることができません。このため、「開発前のタイミングで調査をしたときには何も見つからなかったけど、製品化直前に改めて調べたら抵触しそうな他社特許が見つかった」というようなことが起こり得ます。このことは理解しておく必要があります。

 

また、調査は熟練度によって結果に違いが生まれます。キーワードや特許分類の選定の仕方によっては抜けや漏れが出てきてしまいます。個人的には、100%完璧な調査は不可能だと思っています。調査経験が豊富な方であれば精度の高い調査が可能だと思いますが、それでも100%の調査はできないはずです。

 

それでも調査をお勧めするのは、経験上、先行技術調査によって近いものが見つかる可能性が高いと感じているからです。仮に、同じようなものが見つかったとしても、ネガティブに考える必要はありません。それとの違いを明確にできれば、権利取得の可能性を高めることもできますし、権利侵害にならないような対策を取ることもできます。

 

5.まとめ

 

いかがでしたか?先行技術調査の重要性についてご理解頂けましたか?先行技術調査は開発の第一歩と考えることもできるくらい大切なものです。調査は専門の調査会社や調査業務を行っている特許事務所に依頼することもできますが、開発活動をスムーズに勧めるためにも、自社で調査をできるようにしておくことをお勧めします。自社で調査をするということをベースに、調査が難しい場合等に、調査会社や特許事務所等に外注をするというスタンスがいいのではないかと思います。

 

本ブログでは、今後も、知財制度について情報をアップしていきます。知財制度の理解を深め、ビジネスにしっかり活用していきましょう!!

 

 

+++++++++++++++++++++++++++++++

特許や商標等、知財の相談なら千代田区岩本町(秋葉原)の小林国際特許事務所へ

~ビジネスで勝つための「仕掛ける知財」を提案します~

+++++++++++++++++++++++++++++++

 

小林国際特許事務所(https://kobaipo.jp/

弁理士 小林 正英

〒101-0032 東京都千代田区岩本町3-4-5 第一東ビル

TEL:03-3866-3327 FAX:03-5821-6228

 

関連タグ

関連記事

特許か実用新案か?

皆さんこんにちは、弁理士の小林です。 今日は「」というテーマでお話します。   「先生、これは特許じゃなくて実用新案くらいかなと...

特許出願に必要な書類

皆さんこんにちは、弁理士の小林です。 さて、今日のテーマは「特許出願に必要な書類」です。 特許出願をする際に提出する書類は次の4...

「拒絶理由通知」が来たらもう終わり?

皆さんこんにちは、弁理士の小林です。 今日は「『拒絶理由通知』が来たらもう終わり?」というテーマでお話します。 以...

外国特許出願費用助成事業(令和3年度第1回)

令和3年5月31日から、東京都中小企業振興公社の外国特許出願費用助成事業(令和3年度第1回)の申請受付が開始されます。東京都内の...

お問い合わせはこちらから

    入力必須
    貴社名・貴事業所名

    入力必須
    ご氏名

    入力必須
    メールアドレス

    入力必須
    お電話番号

    入力必須
    ご相談内容を500文字以内でご入力ください。

    〒101-0032 東京都千代田区岩本町3‐4‐5 第一東ビル