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発明者と出願人はどう違う?

公開日:2022年12月17日

 

 

 

皆さんこんにちは、弁理士の小林です。

今日は「発明者と出願人はどう違う?」というテーマでお話します。

 

特許出願をする際には、願書という書類を提出します。願書には「発明者」と「出願人」を記載する必要があるのですが、「発明者」と「出願人」の違いをきちんと理解できていますか?「発明者」や「出願人」が誰なのかという点は、意外と揉めることが多いポイントです。無用な揉めごとが生じないよう、特許出願をご検討の方はぜひ参考にしてください。

 

1.「発明者」とは

 

「発明者」と言うのは、読んで字のごとく発明をした人のことです。会社で開発を行う場合、開発担当者が発明者になる場合が多いと思います。発明者になれるのは個人だけであり、法人は発明者にはなれません。発明が完成すると発明者には「特許を受ける権利」が発生します。この権利は出願をするために必要な権利と考えるとわかりやすいと思います。「特許を受ける権利」を持たずに特許出願をすることはできません。

 

2.共同で発明をした場合の「発明者」

 

発明者は一人とは限らず、複数人で共同で開発を行った場合には複数人が発明者になります。この場合、複数の発明者が「特許を受ける権利」を取得することになります。しかし、開発活動に携わった全ての人が発明者になるかというと、そう言うわけではありません。何をもって「開発活動に実質的に関与した」と言えるかは判断が難しいところもありますが、一応の判断基準として、特許庁HPでは次のような考え方が示されています。

 

〈判断基準〉特許庁HPより引用

発明は技術的思想の創作であるから、 実質上の協力の有無は専らこの観点から判断しなければならない。思想の創作自体に関係しない者、たとえば、単なる管理者・ 補助者又は後援者等は共同発明者ではない。以下の者は、共同発明者ではない。 

(例1)部下の研究者に対して一般的管理をした者、たとえば、具体的着想を示さず単に通常のテーマを与えた者又は発明の過程において単に一般的な助言・指導を与えた者(単なる管理者) 

(例2)研究者の指示に従い、単にデータをまとめた者又は実験を行った者(単なる補助者

(例3)発明者に資金を提供したり、設備利用の便宜を与えることにより、発明の完成を援助した者又は委託した者(単なる後援者・委託者

 

・発明の成立過程において、着想の提供(課題の提供又は課題解決の方向づけ)を行った者、着想の具体化の 2 段階に分け、各段階について実質上の協力者の有無について 次のように判断する。

(例4)提供した着想が新しい場合は、着想(提供)者は発明者である。ただし、着想者が着想を具体化することなく、そのままこれを公表した場合は、その後、別 人がこれを具体化して発明を完成させたとしても、着想者は共同発明者となることはできない。両者間には、一体的・連続的な協力関係がないからである。 したがって、この場合は、公知の着想を具体化して発明を完成させた者のみが発明者である。

(例5)新着想を具体化した者は、その具体化が当業者にとって自明程度のことに属し ない限り共同発明者である。

 

発明者が誰であるかは、これらを参考に決定する必要があります。誰が発明者かよく分からないから、社長を発明者にしておこうというのはやめましょう。

 

3.「出願人」とは

 

「出願人」は、出願手続をする人のことです。「将来的に権利者になる人」程度に考えてもらうと分かりやすいと思います。「発明者」とは異なり、法人も「出願人」になることができます。世の中の出願の多くは法人(会社)によるものです。会社は自然人ではないため、「発明者」にはなれません。会社の従業員が行った発明の発明者は開発担当者などの従業員で、会社は発明者である従業員から「特許を受ける権利」を譲り受けて特許出願をしています。従業員のした発明の中には、「職務発明」と呼ばれるものがあります。「職務発明」については適切な処理をしないと、後々会社と従業員(開発者)の間で大きな揉めごとに発展する可能性があります。「職務発明」の取扱いについては、しっかりと取り決めをしておくことが大切です。

 

4.まとめ

 

いかがでしたか。「発明者」と「出願人」の違いは理解できましたか?「発明者」や「出願人」は、揉めごとの種となる可能性がある部分ですので、しっかりと理解しておきましょう。

 

 

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