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外国での権利取得ルート

公開日:2021年06月15日

 

 

皆さんこんにちは、弁理士の小林です。

今日は「外国での権利化」というテーマについてお話します。

 

「外国での権利化を考えているけど、どうすればいいのかわからない。」

「外国で権利化をするときって、どのくらい費用が掛かるの?」

 

こんな悩みや疑問はありませんか。

この記事では、そんな方々のために、外国での権利化についてお話します。外国での権利化をご検討中の方は是非参考にしてください。

 

1.権利の効力が及ぶ範囲

 

外国出願の必要性について説明をするためには、権利の効力が及び地域的な範囲について知っておく必要があります。

 

結論からお伝えすると、権利の効力が及ぶ範囲は権利を取得したその国のみです。

 

日本で取得した権利は日本国内でのみ効力があり、米国や中国といった外国では効力が及びません。このため、外国でビジネスをする場合には、そのビジネスをする国ごとに権利を取得する必要があります。

 

【ここがポイント】

権利の効力が及ぶのは権利取得国のみ!!外国でビジネスをする際には、ビジネスを行う国ごとに権利を取得する必要がある。

 

2.外国での権利化方法

 

「権利の効力が及ぶのは権利取得国のみ」、「外国でビジネスをする際にはその国ごとに権利を取得する必要がある」そこまでは分かった。

でも、外国で権利化をする方法には、具体的にどうすればよいのでしょうか?

 

外国で権利化をするためには、権利化希望国に特許出願をする必要があります。出願の方法としては、次の2つの方法が考えられます。

 

  • 国別に出願をする方法
  • 国際出願(PCT出願)をする方法

 

1つ目の「国別に出願をする方法」というのは、権利化を希望する国ごとに個別に出願手続きを行う方法です。たとえば、中国で権利を取得したい場合には、出願書類を中国語で作成し、その書類を中国の特許庁に提出します。

 

2つ目の「国際出願(PCT出願)をする方法」というのは、1つの出願手続きで条約加盟国のすべてに出願をしたことにしてもらえる制度を利用する方法です。国際出願をすると、特許協力条約(PCT)加盟国のすべてに出願をしたものとして扱ってもらえます。ただし、ここで注意が必要なのは、あくまでもすべての加盟国に「出願」をしたものとして扱われるのであって、すべての加盟国で「権利」が付与されたというわけではないということです。権利化のためには、優先日から原則30か月以内に、権利化を希望する国に対して「国内移行」という手続きをとり、各国での審査を通過する必要があります。「国内移行」というのは、簡単に言うと、翻訳文の提出と印紙代の納付です。通常、この「国内移行」手続きは現地の代理人を通じて行います。

 

【ここがポイント】

外国で権利化をするための方法は、国別出願と国際出願の2つ。国際出願の場合には、後日、権利取得希望国に対する国内移行手続きが必要。

 

3.外国出願のパターン

外国で権利化をするためには、前述の国別出願か国際出願のいずれかをすることになりますが、出願のパターンは1つではありません。ここでは、日本企業がよく行う3つのパターンをご紹介します。

 

パターン1:国内出願⇒国別出願

 

1つ目のパターンは、最初に国内出願をし、その後1年以内に優先権を主張して各国へ国別出願を行うパターンです。

 

優先権というのは、ある条約加盟国(第一国)でした出願した発明について他の条約加盟国(第二国)で権利化をする場合に、第二国の出願が第一国の出願日にしたものとして取り扱われる制度です。

 

たとえば、発明Aについて、2019年5月1日に日本で出願をした後、2020年4月30日に中国で出願をしたとします。この時、優先権を主張することで、中国での出願が2019年5月1日にしたものとして扱われ、特許性が判断されることになるのです。

 

このパターンは、台湾など、後述するパターン2や3を使えない国での権利化を希望する場合や、権利化希望国が少ない場合に利用されるパターンです。

 

パターン2:国内出願⇒国際出願

 

2つ目のパターンは、最初に国内出願をし、その後1年以内に優先権を主張して国際出願(PCT出願)を行うパターンで、最も利用する方が多い方法です。

 

このパターンでも、国際出願をする際には優先権を主張することが多いです。優先権主張をするとこで、前述のような効果が得られます。

 

国際出願で注意しなければならいのは、日本を含める出願とするか否かという点です。前述のとおり、国際出願をすると原則として条約加盟国のすべてに出願をしたものとして扱われます。ここでいう条約加盟国には当然日本も含まれます。

 

日本を含む形で国際出願をする場合、後日、日本に対しても「国内移行」の手続きを行う必要があります。他方、日本を除く形で国際出願をする場合には、「国内移行」の手続きを行う必要はありません。

 

国際出願に際して日本を含めるか除くかは、次の基準で判断することができます。

 

国内出願以降に改良があり、その改良事項を国際出願に盛り込む場合 ⇒日本を含める形で国際出願を行う。

 

国内出願以降に改良はなく、国内出願からの変更がない場合

⇒日本を含める形で国際出願を行う。

 

この判断基準は一般論であり、すべてのケースに当てはまるとは言い切れません。国際出願を行う際には、案件を代理する弁理士に相談するようにしましょう。

 

パターン3:国際出願(ダイレクトPCT)

 

3つ目のパターンは、国内出願をせずに、最初から国際出願を行うパターンです。いわゆる「ダイレクトPCT」と呼ばれる方法で、近年は、このパターンをとる企業も増えているように思います。

 

この方法は、複数国での権利取得を希望している場合や事後的な改良が想定しずらい場合、国際出願分の費用を削減したい場合などに利用されるパターンです。

 

4.外国出願にかかる費用

外国出願にかかる費用は、皆さんが最も気にされる点の一つかと思います。できれば具体的な金額をお伝えしたいのですが、案件ごとに大きく異なるため、一概に「●●万円です」と言うことができません。一つ言えるのは、日本での権利化に比べて外国での権利化は高額になるということ。その理由は、外国で権利化をする際には、国内の代理人(弁理士)に支払う費用のほかに、次のような費用が掛かるからです。

 

・現地代理人(現地の弁理士や弁護士)の手数料

・出願書類や庁発行書類、現地代理人からのレター等の翻訳代

・現地特許庁に支払う印紙代

・海外送金手数料

・実費(郵送代等)

 

これらの費用が掛かるこを考慮すると、国内での権利化の2.5~3倍程度は見積もっておくことが必要かと思います。実際には、拒絶理由通知の回数や引用文献のボリューム、出願書類のボリューム等、様々な要因によって費用が決まるため、2.5~3倍程度見ておけば絶対に大丈夫とは言いにくいところはありますが、目安として、最低でもこのくらいは見ておく必要があります。

 

このように、外国での権利化を目指すときには費用が嵩むことから、当事務所では「助成金」をお勧めすることが多いです。たとえば、例年、JETROでは「中小企業等外国出願支援事業」という助成事業が行われています。JETRO以外にも、東京都中小企業振興公社で、「外国特許出願費用助成事業」という助成事業が行われています。いずれも、条件が合う場合には活用して頂くとよいと思います。

 

JETROの「中小企業等外国出願支援事業」の詳細についてはコチラ(↓)もご確認ください。

令和3年度中小企業等外国出願支援事業

 

東京都中小企業振興公社の「外国特許出願費用助成事業」の詳細についてはコチラ(↓)もご確認ください。

外国特許出願費用助成事業(令和3年度第1回)

 

【ここがポイント】

外国での権利化には、国内出願の2.5倍以上の費用が掛かる。条件が合う場合には、助成金の活用もご検討を!

 

5.まとめ

 

今日は「外国での権利化」というテーマでお話をしてきましたが、イメージは掴んでもらえましたか?

 

近年、当事務所でもPCT出願をはじめ外国での権利化のお手伝いをする機会が増えており、ノウハウも蓄積してきております。ご要望がある場合には、JETROや東京都中小企業振興公社の外国出願助成金事業の申請書類の作成にもご協力しています。外国での権利化をご検討の方はお気軽にご相談ください。

 

 外国出願のご相談予約はこちらからどうぞ(↓)

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本ブログでは、今後も、知財制度について情報をアップしていきます。知財制度の理解を深め、ビジネスにしっかり活用していきましょう!!

 

 

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